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第2章 Episode 2 痛み






「はい、おおきにー!」


人の良さそうな中年の主婦に頭を下げ、鈴はにこやかな表情を浮かべた。

「犯人らしき人物は、中年男性で大きな鞄を持っていた……っと」

先程の主婦から聞いた有益な情報を、さっそくメモ帳に書き記す。


最初に犠牲となった猫の飼い主の近所を中心に、死骸が発見される前に不審な人物が居なかったかという聞き込みをした所、早朝に大きな鞄を持った中年男性が、早足でゴミ捨て場から立ち去る場面を目撃したらしい。

ようやく手に入れた情報に、鈴の表情が思わず綻(ほころ)んだ。


「日も暮れてきたし、今日の捜査はここまでにしよか。リンも待っとるしな!」



可愛い愛猫の姿を思い、鈴はスキップでもしそうな足取りで帰路につくのだった。


「ただいまー」

鈴が自宅に帰ってきたのは、夕暮れ時。
我ながらよく働いたものだと思う。

明日も捜査を頑張ろうと気合いを入れて、自室へと入った。


「ただいまリン! ええ子にしとったか?」

返事はない。


「リン?」

いつも鈴の声がすれば鳴きながら飛びついてくる筈なのに、今日は何の反応もなかった。

違う部屋で寝てるんかな、と思い立ち、リンの名を呼びながら家中を探し回るが姿は全く見当たらない。



「な、なんでや…ちゃんと戸締まりして、リンが出られへんようにしたのに……」


真っ青な顔で立ち尽くす鈴。


(ど、どないしよう…探さな…!)


慌てて玄関から飛び出し、誰かに協力を仰ごうと携帯の電話帳を開く。


「……いや、アカン。もう時間も遅いし、迷惑かけられへん…」

真っ先にカーソルを合わせた【クロちゃん】の文字を見つめながらポツリと呟く。

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