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第2章 Episode 2 痛み





数時間後…



「はあ…しんどいわー…」

コンビニで買ったおにぎりを頬張りながら、鈴はトボトボと歩いていた。

朝の10時に家を出て、現在の時刻は15時すぎ。

5時間も情報収集しているにも関わらず、有益な情報は全く得られず、強い疲労感が鈴を襲った。

そもそも日名田公園自体、あまり人が寄りつかないことで有名な場所である。

ココアがさらわれた時や死骸が置かれた時に、都合よく、人が近くを歩いている訳ではないのだ。


「ふう……やっぱり無理やったんかな…ウチが犯人見つけるなんて…」

おにぎりを食べ終えて、思わず弱音をこぼしてしまうが、脳裏にカナの泣き顔がよぎり、頭をブンブンと振って気を取り直す。

「弱気になったらアカン! 考えろ、考えるんや……日名田公園での目撃情報が期待できないんやったら……他の場所で…」


腕を組み、うーんうーんと唸りだす鈴。


数分が経過した後、ある考えに至って、顔を勢いよく上げた。

「そや! 最初の犠牲ネコの飼い主さんが住んでいる場所の近くやったら、日名田公園よりは人目につきやすいハズや! 行ってみよか!」


先程よりも軽くなった足取りで、鈴は走り出した。




一方、その頃…




「アカン、アカン。ウチとしたことがケータイを忘れてまうなんて」

パート先に向かっていた鈴の母親、珠美(たまみ)は忘れ物を思いだし、大急ぎで自宅に戻ってきていた。

手早く玄関の鍵を開け、充電器に差し込んだままの携帯の元に走る。

「ふう…充電したまま、忘れてまうこと多いな~。ブドウ糖が足らへんのかしら」

何気ない独り言をブツブツと呟きながら携帯を鞄に仕舞い、玄関に鍵をかけて慌ててパート先へと向かった。

この時、珠美は慌てるあまり気づかなかった。



珠美が玄関を開けた、ほんの一瞬の間にリンが外へ飛び出したことに。

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