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第3章 Episode3 挫折



ブヅッ


咄嗟に目を閉じた玲二の耳に、肉が切れるような音が届く。


数秒の間を置いて、玲二の顔に何かの液体が勢いよく落ちてきた。

「うえっ……ゲェ…ゲホッ……」

鼻の穴に液体が入り込み、むせる玲二。口内には鉄の味が広がっていく。


「……?」


咳が治まり、そっと瞼を開くと、目の前に赤い液体が溢れ出ている物体があった。



「え…………」


よく目を凝らすと、それは物体ではなく有理の右手首だった。

手首から先にある筈の掌(てのひら)は無くなっており、代わりに見えるのは赤黒い肉の側面と、その間に挟まっている白い骨だ。



「…………」

蛇口のように血が溢れている手首を、有理は無言のまま見つめる。



「あああああああああああああッ!!!!」

錯乱したように有理は突然叫びだし、左手で切断面を押さえながら後ずさった。

「なんだよっ!! お、れの……手、どこだ!!」


全身を血で汚しながら後ろに下がっていく有理。

すると何かを踏んづけてバランスを崩し、そのまま倒れてしまう。


「がっ!!」


強かに頭を打ち付け、一瞬意識が遠くなるが何とか堪える。

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