テキストサイズ

デスサイズ

第3章 Episode3 挫折




「……君は間違ってるよ」


不意に聞こえた玲二の声が、有理を現実に引き戻す。


「本当に絵が好きなら才能なんて関係ないだろ! 1番とか、才能とか……そんなことにこだわって描いてるから、君の絵は評価されないんだ! 洋介にあって君に無いのは、“純粋に芸術を愛する心”だよ!!」

起き上がって有理と対峙する玲二。

恐怖感が完全に消えた訳ではないが、それ以上の怒りが彼を奮い立たせていた。


「綺麗事なんかいらねえよ。お前は黙って洋介を殺せばいいんだ」

全く動じることなく、有理は玲二に歩み寄った。

「俺に逆らって殺されるのと、警察に捕まるの……どっちが良いのか分かるよな?」

玲二が逆らえないことを確信しているように、いやらしく笑う。

「…………」


沈黙を承諾と受けとったのか、有理は満足そうに何度も頷いた。

それを無視して玲二は、そっと瞼を閉じる。



“本当に変わりたいと思わなければ、お前は変われないままだ”



尊敬する兄貴…黒斗の言葉を思い出し、玲二は覚悟を決めて、目を開ける。



―オレは強くなりたい


―強くなる為に変わるんだ


「オレ……洋介を殺さない」

「は?」


思わぬ答えに、有理の思考が一瞬フリーズする。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ