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第3章 Episode3 挫折




フランスの美術学校に通っていた有理は、優等生として講師から注目されていた。

昔のように“天才”と称えられていた有理は心地よい優越感に浸り、日々を楽しく過ごしていた。


だが、彼にとって平穏だった日々は、またも友によって壊された。


“足で絵を描く少年”として一躍、時の人となった洋介の記事が、フランスの芸術関連の本に掲載されたのだ。


足を使っているにも関わらず、芸術的な洋介の絵はフランスでも話題となった。

それと同時に、有理の絵が洋介と比較されることが増えはじめる。

「洋介の方が絵が上手い」

「洋介と比べれば、有理はまだまだ」

「有理も才能があるが、洋介の方が…」




洋介と比べられ、自分が下に見られる声が聞こえる度、プライドが高い有理の心が、かき乱されていく。



そして、不安定だった有理にトドメを刺したのは講師の何気ない一言だった。



コンクール用に描きあげた自信作を講師に見せた時のことだ。



「確かに君は、絵が上手いし丁寧に描いてある。だが、心が足りない。綺麗に描くだけでなく、心を込めてみなさい。君と同じ日本人で言うなら、洋介のように」

有理の心を冷たい風が吹き抜ける。

「洋介は素晴らしいよ。足で描くのは勿論、絵を楽しんで描いてるのが伝わってくる作品も高評価だ。君に無くて、洋介にあるものは沢山ある。それに…」


もう講師の言葉は耳に届いていなかった。


―洋介、邪魔だ


―コイツが生きている限り、俺は1番になれない


―洋介、殺さないと


―コ ロ サ ナ イ ト



殺意に支配された有理は、洋介を殺す為に日本に戻ってきた。

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