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第3章 Episode3 挫折




6年前、絵画教室にて



「ハァ……ゲ、ゲホッ」


背後から刺され、床に倒れている玲二。

激痛に耐えながら、側に立っている犯人の姿を見上げると、信じられない人物が立っていた。



「ッ……!! ど、して……? ゆうり……」


ショックを受ける玲二を、有理は蔑(さげす)むように見下ろす。

手袋を嵌めた手には血濡れた出刃包丁が握られている。


「…………」

無言のまま有理は、出刃包丁を投げ捨てて現場を早々に立ち去っていった。


(……有理が……オレを……)

その様子を見ていた玲二の意識はそこで途絶える。




その後、玲二は一命をとりとめ意識も回復するが、自分を刺した犯人の顔をショックのあまり忘れてしまっていた。



玲二が病院に入院してから数日後、ある人物が見舞いに訪れた。


「オーッス玲二! 元気かあ?」

いつものように軽い口調で入ってきた有理を目にした瞬間、玲二にフラッシュバックが起き、自分を刺したのは有理であることを思い出した。


「ゆ、ゆう、り……」

自分を殺そうとした親友が現れ、恐怖のあまり叫ぶことも出来ない玲二。


そのことを分かっているのか、有理は底意地の悪い笑みを浮かべながらゆっくりと歩み寄ってくる。


「生きてて良かったな玲二。でも、俺が犯人だってことは絶対、誰にもバラすなよ。誰にもバラさなければ、もうお前を刺したりしないからさ。……な、約束?」

「……ッ!」


怯えきっている玲二は、涙を流しながら頷くことしか出来ない。


「もし約束を破ったら……次はぶっ殺すから」


耳元で囁(ささや)かれた言葉は、いつまでも玲二の頭の中でこだましていた。





幼い頃に感じた恐怖やトラウマとは根強いものであり、6年経った今でも玲二は有理の支配から脱せずにいた。

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