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第3章 Episode3 挫折




「……用事はそれだけなの? ちゃんとオレは約束を守ってるよ」

震える足を叱咤(しった)しながら、自分より身長の高い有理を上目遣いで見つめる。


「いや、それはただの確認だよ。用事は別にある。お前に頼みがあるんだ」

有理はそう言うと、玲二の耳元に顔を近付けた。


「実は……洋介を殺してほしいんだ」


「は?」



―言われた言葉の意味が分からない。

―ワカラナイ。



「……冗談……だよね?」

軽い口調で言おうとしたが、震える唇から絞り出されたのは弱々しく頼りない声。


「冗談なんかじゃない。本気で洋介を殺せと言ってる」


氷のように冷たい有理の眼を見た玲二の全身から、血の気がサーッと引いていった。


「何で、何でだよ!? 洋介は親友だろ!? 何で殺さなくちゃいけないんだよ!!」

驚きのあまり声を荒げる玲二だが、有理は無表情のままだ。


「あのさ……お前は俺に刺された理由を分かってんの?」

「そんなの分かる訳ないだろ! ただ……オレのことが嫌いになったのかな、とか…怒らせるようなことしたかな、とか思ってたけど……」

「相変わらず頭が足りない奴だな! そんなことで、いちいち刺し殺そうとするかよ!」


玲二の言葉を、有理は鼻で笑い飛ばした。

「じゃあ……何でオレを……」


有理が何を考えてるか分からず、混乱している玲二の眼から涙が一筋流れ落ちる。

そんな玲二の胸ぐらを有理は乱暴に掴み、怒鳴りつけた。


「分かんねえなら教えてやるよ! 玲二、お前が俺よりも上に行ったからだ!!」

「う、上……?」


「お前ら2人は俺の引き立て役だった! それなのに、お前らの方が俺よりも絵が上手くて、皆に注目されている!! それが許せなかったんだよ!!」

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