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第3章 Episode3 挫折




午後23時04分



(……そろそろ約束の時間、だ)

布団に潜っていた玲二はスマホで時刻を確認すると、パジャマから外着に着替える。


着替え終えた玲二は、音を立てないよう忍び足で玄関に向かい、そのまま静かに家を出て行った。






玲二が向かった場所は、かつて通っていた絵画教室の建物。

玲二が刺されて以来、事件を恐れた保護者達が次々と生徒を辞めさせ、最終的には廃校になってしまった。


薄暗い教室の中に入ると、玲二はキョロキョロと落ち着きなく辺りを見回した。



「や、約束の時間に来たよ! 何処にいるの!?」

「ノロマにしちゃ、ちゃんと時間がピッタリだな。感心、感心」


窓際から声が聞こえ、そちらに視線を向ける。




そこには、月明かりに照らされている有理が立っていた。


「有理……」


ゴクリと唾を飲んで、彼に近づきスマホの画面を見せる。

「このメール、何なの?」

スマホの画面には有理が玲二に送ったメールが表示されていた。


メールの内容は『話がある。今夜23時30分頃、絵画教室に来い』というものだった。



それを見た有理は満足したように何度も頷き、口角を吊り上げた。

「なあ玲二。あの事件の時にした約束、覚えてるよな?」

「……忘れる訳ないじゃないか。破るつもりだったら今頃、君は留置所の中だよ」


眉を潜めつつ、玲二は俯く。

「ハハハ!! さっすが親友! そうだよな、お前が俺に逆らえる訳ないもんなあ!!」


ケラケラと笑いだす有理を殴りたい衝動に駆られるが、必死に唇を噛んで耐える。


玲二の脳裏に6年前、有理と“約束”を交わした時の出来事がよぎった。


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