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第3章 Episode3 挫折




「ごちそうさま」

食事を終え、鞄を手に席を立つ黒斗。

「兄貴、もう帰るの?」

「ああ、日が暮れないうちに帰る。邪魔したな」


時刻は午後18時前で、夕日も半ば沈んでいる。


「分かったよ。兄貴、また明日ね!!」


ブンブンと両手を振る玲二に、片手を振り返し、玄関に向かう。



「ちょっと待って」

靴を履き、ドアノブに手をかけようとした瞬間、後ろに立っていた佐々木が声をかけてきた。


「何だ?」

「玲二のことで話があるの」


佐々木の表情から、真剣な話であると察した黒斗は黙って言葉を待つことにする。

「……玲二はね、学校でも親しい友達が居なかったの。だから、貴方が玲二の友達になってくれて安心したし、嬉しいわ。ありがとう」


「……ああ」


「……あの子、悩んでることがあっても心配かけたくなくて、親に黙ってるタイプなのよね…聞き出そうとしても、のらりくらりとごまかされちゃう。……だから…」


そう言うと、佐々木は深々と頭を下げた。


「玲二の母親としてお願いするわ。どうか、あの子の力になってほしいの」


佐々木の言葉を聞いて、黒斗は先ほど聞いた玲二の過去を思い出す。

強くなってトラウマを乗り越えたいと、真剣な眼差しで言っていた玲二。


その時の彼の表情を思い出し、黒斗の口許が僅かに緩んだ。


「頼まれるまでもない、アイツは俺の舎弟だからな。最後まで面倒を見てやるさ」


「……ありがとうね、月影くん」


未だに頭を下げたままの佐々木に背を向け、黒斗はその場を後にした。

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