
デスサイズ
第3章 Episode3 挫折
「まさか、玲二の言ってた先輩が月影くんだったとはね……」
テーブルに熱々のオムレツを置きながら、溜め息まじりに佐々木が呟いた。
「……こっちも、佐々木の母親がアンタだとは夢にも思わなかったよ」
「先生に向かって“アンタ”とは何ですか!」
無礼な物言いに佐々木が文句を言うが、黒斗は臆することなくオムレツを口に運ぶ。
現在、ダイニングで3人は晩ごはんを食べていた。
佐々木を見た黒斗はさっさと帰ろうとしたが、玲二が引き止め、なし崩しに晩ごはんを共にすることになったのだ。
ちなみに玲二の父親は、単身赴任で家を留守にしている。
「まったく! 玲二が“カッコよくて良い人”って言ってたから期待してたら……よりによって貴方とは!」
「キーキーうるさい。そんな大声を出さなくても聞こえてる」
「このガキャー!!」
教師と生徒の会話とは思えない殺伐としたやり取りを、玲二は笑いながら見つめていた。
その時、玲二のスマホから着信音が鳴り響き、玲二は画面を見た。
「っ!」
画面を見た玲二が固まる。
「あら、どうしたの?」
「ううん、ただの迷惑メールだよ」
笑いながらスマホをテーブルに置く玲二。
佐々木は気づいていないようだったが、黒斗は玲二がスマホを見た時、一瞬だけ恐れるような表情をしていたのを見逃していなかった。
