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第3章 Episode3 挫折


「……兄貴。オレ、変われると思う?」

「知らん。だが本当に変わりたいと思わなければ、お前は変われないままだ。口だけなら、何とでも言えるからな」


すがるような視線を送ってくる玲二に、黒斗はピシャリと言い放った。

「……そ、そうだよね」


俯く玲二。


ガチャガチャ


その時、玄関から物音が響き、2人の視線はそちらに移された。


「あっ、お母さんが帰ってきたのかも!」


パアッ、と笑顔を輝かせて玲二が玄関に向かうと丁度、扉が開いた。


「ふう、ただいま」

「お母さん、お帰りなさい!」



「……?」


玲二が“お母さん”と呼んだ女性の声が、聞き覚えのあるもので、黒斗は首を傾げる。

「兄貴が来てるんだよ! 今、オレの部屋にいる!」

「昨日言ってた、学校の先輩?」

「そうそう! こっちこっち!」



ドタドタと騒がしい音がこちらに近付いてくるのを感じ、黒斗は入り口を見やる。


「兄貴! 紹介します、オレのお母さんだよ!」


玲二が手を引いて連れてきた女性の姿を目にした黒斗は、思わず言葉を失った。

女性も同じく、黒斗を見て驚いたように目を大きく見開いて黙っている。


「あ、あれ? どしたの2人共」

謎の沈黙に戸惑う玲二。


数秒後、我に返った女性がビシッと黒斗を指さし、大声をあげた。


「つ、つ、月影くん!? 何で、貴方がここに!?」

静寂を破る騒々しい声に、黒斗も玲二も咄嗟に耳を塞いだ。


「……あんたの息子に、無理やり連れて来られたんだ」

耳を塞いだまま、無愛想に答える黒斗。


玲二の母親…それは何と、黒斗のクラスの担任教師、佐々木 のぞみだったのだ。

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