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第3章 Episode3 挫折


「あのさ有理…どうして……戻ってくる気になったの?」

「え、何? もしかして迷惑だった?」

ブンブン、と勢いよく頭を横に振って、玲二が否定を示す。


「違うよ。フランスに行ってから、音沙汰も無かったし、帰ってくる様子も無かったし……」

おどおどしながら言葉を続ける玲二。


「いや、俺もさ、一人前になるまでは帰って来ないつもりだったんだよ。偉そうにフランスまで行ったからには、立派になった俺を見てほしくて。でも、洋介の記事を読んだら2人に会いたい気持ちが抑えられなくなってさ」

「有理も相変わらずだね。思い立ったら即、行動」

「まあな!」


洋介と有理は本当に仲が良いようで、心底楽しそうに笑っている。


「……佐々木、記事って?」

若干、蚊帳(かや)の外に居るような気がする黒斗が隣にいる玲二に聞く。


「うん。洋介、さ……ほら、腕が無いよね?」


遠慮がちに洋介を指さすが、洋介は有理との会話に夢中で気がついていない。


「洋介は腕が無いけど、足の指を器用に使って絵を描くことが出来るんだ。洋介が足で描いた絵がコンクールで受賞して、一躍話題になったんだよ」


「そうそう。その記事、フランスでも載っててさ。洋介、頑張ってるなって思って会いたくなった」


有理はそう言うと、洋介に向けていた視線を玲二に移した。

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