
デスサイズ
第3章 Episode3 挫折
翌日の朝
外から鈴の部屋を見つめる黒斗。
今日も窓のカーテンは閉められている。
(……今日も欠席、か)
無言のまま踵を返し、学校へと向かう。
「あーにーきー!!」
背後からやけにテンションの高い声が聞こえ、嫌な予感がした黒斗は素早く横に跳んだ。
「ありゃっ!?」
間抜けな声を出しながら、玲二は地面にヘッドスライディングした。
「避けるなんて酷いよー、挨拶しただけなのにー」
「タックルは挨拶に含まれません」
冷ややかな反応をする黒斗だが、玲二はニコニコしたままだ。
「あのさ兄貴、今日ね、学校終わったら…」
「断る」
「まだ何も言ってないよ!?」
座り込んだままの玲二を無視して、通り抜けようとする黒斗。
「待ってよー! オレ、舎弟なのに冷たくない!?」
「俺は甘やかさずに、ビシバシ鍛えるタイプなんだ」
それらしいことを言う黒斗だが内心、関わりたくない気持ちで一杯だった。
第一、昨日の舎弟うんぬんの話は半ばノリというか、勢いに負けただけである。
適当にあしらっておけば、相手の方から離れていくだろうと考えて、冷たく厳しく接している。
「なるほど! 強くなる為には、やっぱりビシバシが一番だよね!」
が、肝心の本人は鍛えてくれていると都合よく解釈しているようだ。
─ダメだ、コイツ
ポジティブすぎる玲二に、頭が痛くなるような思いを抱く黒斗。
どうやら面倒な相手を舎弟にしてしまったようだ。
「じゃあ、兄貴! 学校が終わってからねー!」
手を振る玲二から、足早に遠ざかった。
