
デスサイズ
第3章 Episode3 挫折
「洋介ーっ!」
いきなりハイテンションで部屋に入り込んだ玲二だが、部屋の主は特に驚いた様子もなく、椅子に座ったままだ。
「聞いて聞いて! 今日、すっごく良いことがあったんだ!」
荒い鼻息のまま、玲二は椅子に座っている少年へと近付いた。
少年の足元には大きなキャンバスが置いてあり、デッサンの途中であろう絵が描かれている。
「へえ、何があったの?」
振り向くことなく、少年はキャンバスを見つめたまま、鉛筆を持つ右足を器用に動かし、デッサンを続けている。
「あのね! 学校の先輩に、舎弟にしてもらえたんだ!」
思わぬ言葉に少年の動きが止まり、勢いよく振り向いた。
「舎弟!? 良かったじゃないか玲二! やっと学校で相手にしてくれる人が出来たんだ!」
バンザイのポーズでもしそうなテンションで、自分のことのように喜ぶ少年には両腕が無かった。
少年の名前は三成 洋介(みなり ようすけ)。
玲二の親友であり、画家を目指して勉強中の少年だ。
「相手にしてくれるって……何か、オレが孤立してるみたいな言い方だね」
洋介の言葉に、玲二はふてくされたように頬を膨らませる。
「アハハ、ごめん。だって玲二が同級生の話をしてくる時、鞄を取られたーとか、パシられたーとか、そういうのばっかりだったからさ」
ケラケラと笑う洋介に、玲二は何も言い返せない。
その通りだからだ。
能天気でノロマな玲二は、からかってくる相手こそ居るものの、仲が良い同級生や先輩は居なかったのである。
