
青い桜は何を願う
第7章 哀情連鎖
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「飲み物買ってきますね!桐島先輩と今井先輩はウーロン茶、さくら先輩はミルクティー、まりあ先輩は何が良ろしいですか?」
「抹茶豆乳ミルク」
「了解です。抹茶豆乳ミルクは一本百三十円なので、あと十円下さぁい」
「はいはい、前払いね、はい。気を付けて行ってらっしゃい」
「よろしくね、いつも有り難う」
さくらはまりあと、春に中等部三年生になる一つ下の下級生ら、夢藤ひより(むとうひより)と加嶋百合子(かしまゆりこ)を見送った。
ひよりも百合子も、日頃から何かと気配りが利く。今も昼休みに入るなり、自分達のものを買いに行くついでだからと、他の部員達の飲み物を訊いて回ってくれていたのだ。
「衣装が完成しても小物があるのに、のんびりしている場合ではないのよね。けれど、昼休みは他の部の人達も皆休んでいると思うと、私達も休まないわけにはいかないのよねぇ」
「同感です。休める時は休まなくちゃ。あたし、もうさっきから手縫いばかりで肩が凝っちゃって凝っちゃって……。でも、そろそろウォーキングの練習やプログラムの構成も考えなくちゃ、やばくありません?」
「音楽も選んでいきたいわ。私、ファッションショーなら今井先輩の選曲して下さるBGMは歩きやすいというか、多分、感性に合いますの。ただ、阿倍野先輩が提案して下さる音楽も、ゆめかわいい感じがあって、悩みますわ」
「こらぁ、美咲さん。そんな無防備なこと言っていては、由夏が期待してしまうでしょ。あの子、さっきだって美咲さんの後ろ姿を眺めてばかりで、午前中、全然手が動いていなかったんだから」
「へぇ、阿倍野さんって美咲さんのフリークなんだ?仕方ないよ今井さん。美咲さんは、編曲クラシックに目がないんだから」
「本当、さくさくの趣味は分かりやすいわ。音楽もお洋服も。私には、可愛らしすぎて無縁の世界だけれど」
新入生歓迎会が間近に迫ったこの時期は、手芸部の部員が顔を合わせれば、ほぼ決まって切羽詰まった話になる。
ただし、こうして話が脱線して、いつの間にやら雑談になるのも、お決まりだ。
今回も、さくらとまりあ、透と妃影の間に、すっかり和やかなムードが出来上がっていた。
