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スキをちょうだい。

第8章 好きをちょうだい


 それを背中に聞いて、環は口を開いた。

「別にいいんだよ。航太が許すっていうならさ」

 まるで図書室の支配者のように、室内をゆっくりと歩き回る。

「でも俺は許さないから。絶対に」

 その語調は怒っている時のそれであり、そこまで想われていることを喜べばいいのか、これから来るだろうかなでの為になだめたらいいのか、航太は分からなかった。

「とりあえず、今からの流れをさ」

 話題を変えようとした、その時ーー。


「航太くん」


 彼の鼓膜を震わせたのは、かなでの驚くほど冷めきった声だった。

 かなでは、冷や汗をたらす航太へ詰め寄る。

「どういうこと? 何でそいつといるの?」

 語気を荒げながら、無遠慮に環を指差すかなで。

「いや、あの、話がありまして」

 思わず、敬語になる航太。

「お前より俺ってことに決まってんじゃん」

 空気をぶち壊す環に、かなでの、獣のような鋭い眼光が飛ぶ。

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