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スキをちょうだい。

第8章 好きをちょうだい


「あんたには聞いてない」

 そのまま、航太へ視線を戻す。

 一瞬、ひるみそうになった航太だったが、力強く頷いた。

「環の言うとおりだ」

 重い沈黙。

 航太の胃が痛む、キリキリという音が響きそうだった。


「……あぁ、そう。残念」

 かなでは低い声で呟いて、軽く首を傾げた。

「航太くんには、ボクの忠告が、ボクの気持ちが届かなかったんだね」

 本当に落胆した様子で、うっすらと涙さえ浮かべるかなでを、環が鼻で笑い飛ばした。

「忠告って。意味わかってんの?」

「環!」

 航太がたしなめるが、彼は止まらない。

「相手のことを思ってするのが忠告っていうんだよ。てめぇの勝手で、人を傷つけることじゃない」

 怒りのせいで普段よりもだいぶ口が悪くなっている環。

「黙れ! あんただってそうじゃないか!」

 かなでも負けじと怒鳴り返す。

 僅かの間。

 環は肩をすくめた。

「否定はしないよ」

 言って、航太の隣に立つ。

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