
スキをちょうだい。
第8章 好きをちょうだい
四限目の授業が終わって、すぐ、航太は田中に昼食を取っていていいと伝えて、教室を出た。
騒がしい廊下を歩きながら、少し後ろを振り返り、環がついてきているのを確認する。
ーあー、胃が痛い…‥。
彼は、今更ながら後悔していた。
かなでには、確かにたくさん振り回されて、心身ともに傷つけられた。
しかし、その結果、とは言い難いが、環との関係が「正式」になったことも確かなのである。
航太の中では、かなでへの復讐心よりも悲願が叶った喜びの方が大きかった。
ーでも写真は返してもらいたいし。
考えている間に、図書室に到着した。
引き戸を静かに開けて、中を確認する。
図書室は相変わらず、本の臭いと静寂を漂わせているだけだ。
しかし、航太は中に入らずに扉を閉めた。
そして、不思議そうな表情をしている環を、恐る恐る、見上げる。
「あのさ、やっぱり」
言いかけた航太の口の前に、環は人差し指をたてた。
「止めるなんて聞かないからね」
言葉を先回りされて、航太は思わず引きつった笑い方をする。
「で、ですよね~…‥」
教室に入りながら、そっと重いため息を吐いた。
