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スキをちょうだい。

第8章 好きをちょうだい


ー大丈夫。

 航太は、心の中で呟いた。

 そんな彼に、かなでが変わらない調子で、話しかけてきた。

「おはよう、航太くん」

 視線を合わせただけで、冷や汗がふきだしてくる。

 それを悟られないように気を張る航太。

 その様子にとっくに気がついているのか、かなでは怪しい笑みを貼り付ける。
 
「今日、学校休むかと思ってた」

 航太は何も言わずに、ポケットからメモ用紙を取り出し、相手に差し出した。

 中身はこうだ。

『昼休み。図書室で』

 航太は、かなでがそれを読むのを見守った。

「なんだろう。楽しみだな」

 かなでは肩をすくめて、笑った。

 その笑顔は嘘をついているようには見えなくて、チクリ、と、良心が痛んだ。

 だが、この笑顔に騙されて、傷つけられたことは事実なのである。

 そう。まだ事件は終わっていないのだ。

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