
スキをちょうだい。
第2章 こうかい
授業後、次の準備をする航太の元に、再び教師がやってきた。
「辞書、運べ」
「はあ?」
教卓にはさっきまで使っていた、全員分の国語辞典が山積みになっている。
「罰として、だ。国語準備室に運んどけ」
教師は、そうぶっきらぼうに言い残して、教室を出て行った。
「あのくそジジイ」
悪態をつく航太を、後ろの席に座る田中が、笑いながらなだめる。
「まあまあ。おれも手伝うよ」
「おー! さすが田中。心の友よ!」
航太と田中は出席番号が近いこともあり、実際によくつるんでいた。
親友といっても過言ではないが、もちろん、環との関係は秘密である。
二人は重い辞書の塊を手分けして、教師に言われた通りに国語準備室へと向かった。
準備室は、教室がある本棟から渡り廊下でつながっている特別棟にあった。そこではあまり授業をすることはないから、一日中、人気がなくて、とても静かだ。ちなみに図書室はこの棟にある。
