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Gentle rain

第7章 心と体

「三科は、菜摘さんのせいで、自分の兄貴が死んだと思っている。いや、そればかりじゃない。菜摘さんを通して、社長の娘達という存在を、良くは思っていないらしいだ。」

「そうか……」

俺の目の前で、太我は深いため息をついた。

「なあ、太我。三科紘文という奴は、大学時代はどんな感じだった?」

太我は、ちらっと俺を見ると、またテーブルに視線を置いた。

「頭が良かった。どうすればみんなが得するか、それを一早く計算できた奴だった。もちろん見た目もよかったが、誰にでも気さくで優しくて、男女問わず慕われていた。」

「……まるでヒーローみたいじゃないか。」

俺が街中で受けた印象とは、大分違った。

「しかも、家族思い。とりわけ兄貴の事を、尊敬していた。」

その兄貴が自殺。

太我ばかりか、俺の視線も床へと落ちて行った。

「その時に、三科が付き合っていた彼女というのが、今働いている会社の社長の娘だった。」

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