エスキス アムール
第53章 矢吹は良いやつ
「え…」
「どいて、入れないから。」
俺を押しのけると、は家の中に入ってく。
そろそろと付いていくと、木更津は顔を洗うと服を着替えて、バッグを持って出かける準備を始めた。
「どこかに…行くの…?」
「……」
その質問に返答は無く。
木更津は何も言わずに出て行ってしまった。
力無く、そこに座り込む。
木更津は悪くない。
完全に俺が悪い。
もう会うなと言われたのに会って、しかも香水の匂いもべったり付けて。
俺は最低だ。
木更津は怒って当然だ。
でも、どうして木更津がそんなに矢吹のことを敵視するのかわからない。
今までだって要とも飲んできたし、三村とも飲んで酔って帰ってきたこともある。
…独身だから…?
だけどそれだけの理由で…?
俺は木更津に謝らなければいけないけど、でも矢吹と会わないなんていうのは無理だ。
この提携は会社にとってとても重要だし、要と高峰が必死に掴み取ってきてくれたチャンスだ。
これを無駄にするわけにいかない。
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