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エスキス アムール

第43章 だから言ったのに。





それから、ベッドに突っ伏して動かなくなった俺をよそに、要と木更津は打ち解けて酒を飲んで帰って行った。



この短時間で、要は木更津のことを『光平くん』と下の名前で呼び、

木更津も木更津で『要くん』と、呼び合う仲にまでなった。



専ら、彼らの話は俺の話で。
むしろそれ以外の話は何もしていない。


どんな癖があるとか、俺の学生時代の恋愛鈍感エピソードとか、いらないことをたくさん要に話されていた。



もう、否定する気にもなれずに
布団に潜り込んで、先ほどの盛大な告白をしてしまった恥ずかしさと、親友に濃厚なキスシーンを見られた恥ずかしさを


一生懸命鎮めていた。




「波留くん、要くん帰るから。
見送りに行っておいで」

「…やだ。」

「やだじゃないよ。
忘れ物届けてくれたんだから」




忘れ物さえなければ、こんなことにならなかったのだと思うと、数時間前浮かれていた自分が恨めしく思った。

そう考えれば、俺をこんなにも浮かれさせたのは木更津だ。



結局木更津が悪いんだ。



「木更津のバカ!」



回り回って、罪をかぶせられた木更津は笑いながら、はいはいと俺をあやしてベッドから立たせる。


玄関では要が立っていて、背中を押されて見送りに行かされた。




エントランスに出るまで、二人は無言で、俺は恥ずかしくて何を話していいのやらわからないし、


要は要で何を考えているのか全くわからなかった。







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