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ふぁざー × こんぷれっくす

第5章 ファスシネイション

恐怖心に襲われて呆然としている私を全く無視して、二人は会話を弾ませる。


「久しく水族館、行ってないのよね~。ショーとかも見たの?」

「パフォーマンスショーは見てないけど、イベントはやっていたので少し覗いて来ましたよ。とにかく絶景でしたね。魚の天体ショーみたいで凄く綺麗で、別世界に行ったみたいでした」


まぁ~普段の毒舌はどこへやら。
猫被ってムカつくわ――――!


普段とは違う清水の愛想の良さだけじゃなく、さり気ない表現力が絵を好きなママのツボを刺激してしまい、まんまと踊らされてしまう。


「あらあら、風香良かったわね~。素敵な所でデート出来て!」

「あとペンギンとかも可愛くて、風香さんも楽しそうでしたよ」


なっ! また勝手に私のことでっち上げないでよ!

確かにペンギンもラッコも可愛かったけど――――。


そんなことをつい思い返してしまったのが運の尽きか、話がまた変な方に向かい始めた。


「そういえば風香、ラッコのぬいぐるみを持って帰ってきてたわね。主人にそのラッコと風香が似てるって言われてたのよ」

「ちょっとママ! そんなこと言わないでよ!」

「あらあら、何そんなに慌ててるの。清水くんの前だから照れてるんでしょ~」

「ち、違う! そうじゃなくて……」


嫌な予感がする――――。


恐る恐る清水の方を見ると、軽く握った手で口元を隠していたけど、明らかにほくそ笑んでいるのが分かった。



(注:サンシャインのラッコの展示は2016年2月までで、現在は非展示です。)

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