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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


その場にいたキャスト全員とお客さん全員の視線を独り占めしたその人は、大股で僕に歩み寄ってくる

そして僕の腕に絡まっていた女性の手を強引に引き離した


「ごめんね、悠史……。悠史の邪魔になるってわかってたんだけどね、やっぱり我慢できないの……」


目に涙を浮かべてしゅん、と俯いたその人は


「エリカさん……」


つい昨日妊娠を訴えて僕に迫ってきたエリカさんだった

近くにいた敦史の「クソ女……」というため息交じりの呟きが僕の耳に届く


「ホストって職業柄仕方のないことだっていうのはわかってるの……でもね……エリカ……悠史が他の女の子と一緒にいるのなんて見たくないよ……っ……」


エリカさんは綺麗に施した化粧を気にしているのか指先で目の端を拭うように涙を拭う

その姿を見て、それまで黙っていた周囲がざわめき始めた

誰より過敏に反応したのは絡めていた腕をエリカさんに解かれたお客さんだった


「なんなのあんた?聖夜はあたしが指名してるんだけど?大人しく待ってなさいよ!」


お客さんがエリカさんの肩を軽く押す

するとエリカさんは目に溜めていた涙を増やした


「痛いっ……」
「えっ!?そ、そんな強く押してないじゃない……っ」

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