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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


「申し訳御座いませんが他の患者様もいらっしゃいますので、今日はお引き取りいただいても宜しいでしょうか?」
「……はい……。失礼しました」


僕が立ち上がると、敦史も遅れて立ち上がる


結局あんまり良い収穫はなかったな
変な質問をしても特に動揺も見られなかったし


病院から出ると、敦史が大きくため息をついた


「俺あいつ嫌い」
「ふふ、どうしたの急に」
「あの胡散臭え笑顔が心底気に食わねえわ」


そう言った敦史は確かに不満そうな顔をしている


確かにちょっと胡散臭いところはあったかもしれないけど
お医者さんって考えるとあれくらいの人結構どこにでもいるんだよなぁ


結局何が引っかかったのかもわからないまま、追い出された僕たちには他に調べる手立てが見つからない


「後はやっぱりエリカさんに直接当たるか、他に何か知ってそうな人を探すかだね」
「あぁ。……それかあの医者を闇討ちだな」
「それはダメでしょ」


敦史の冗談(だと願いたい)に笑いつつも、今日追い返したばかりのエリカさんともう一度接触しようという気にはならず


「時間潰して帰るか」
「うん。まだ時間はあるしね」
「わかんねぇぞ?明日にはあの女が婚姻届持って来るかもしれねぇじゃん」
「それは困るな……」


僕たちは帰路についた

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