
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
『長野産婦人科』に来たんだから、大体予想はついていただろうにあえて聞いた敦史は意地の悪い笑みを浮かべる
「そうか。じゃあ院長に質問」
「はい。なんでしょう?」
「ここの病院の今の経営状況はどうだ?」
「どう……と申しますと?」
敦史は長い脚を組んで、太股に肘をついた
「最近は少子化だろ?客が少なかったりして経営が難しいんじゃないかと思ってな」
表情と見合った意地悪な質問
それでも先生は穏やかな笑みを浮かべたまま答えた
「いいえ、そんなことはございませんよ。むしろ産婦人科医が不足しているので新しい人を雇いたいくらいです」
接客で培った、とは言ってもただの勘だけど
今の言葉に嘘はないみたいだ
経営は苦しくない
ってことはお金に困っているわけじゃない
つまりエリカさんのお父さんから融資を受けたりする必要もないってことか
診断書は改竄されてないのかな……
いやでも
さっき僕が診断書の話をした時の先生は確かに何か変だったんだ
それが何かはわからないんだけど
「「……」」
僕たち二人が無言になったのを、納得と受け取ったのか先生が身体をデスクの方に向けた
