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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


もともとこういう人なのかな
それとも……


「その女性が持ってきた妊娠を裏付ける診断書が、ここの病院の貴方が書いたものでした」
「……」


先生は続きを促すように黙ったまま


「正直、僕たちは貴方が嘘の診断書を書いたのではないかと思っています」
「なるほど……」


先生は困ったようにため息をついた
なんだかわざとらしいけど、ね


「本当なら診察した際の資料までお見せして証明して差し上げたいのですが……残念ながら個人情報ですので、開示することは出来ませんね」
「……」


「私共にも守秘義務というものがございますので」と微笑んだ先生の眼鏡越しに見える目は、僕たちの疑うフィルターがかかっているからか何か企んでいるように見える


「ただ、そのエリカさんが私が受け持つどのエリカさんかは存じませんが、私達は誠意を持って診察をしています。診断書に嘘を書くなどと言うことは決してございません」


まぁ、普通は否定するよね
嘘でしたなんて言えるわけないし


「一つ聞いてもいいか」
「はい。個人情報に関わることでなければ構いませんよ」
「この病院の院長は誰だ。どこにいる」
「貴方の目の前にいる私が、当院の院長を務めております」

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