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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


「……どういう意味だ?」


暫くして敦史が発した低い声は相手を威圧するよう力をこめたものだった


「ある程度調べて、それでもエリカさんの妊娠が偽物であるという証拠が出てこなければ……家を出て、エリカさんのもとへ行く」


流石に僕だって嘘の妊娠に付き合うつもりはないから遠慮なく調べる
だからエリカさんが本当に妊娠していたのだとしたら、ちゃんとした対応をする

それだけのことだ

それは千秋さん関係なくするべきことでしょう?


「……言ってる意味わかってんのか」
「……」
「千秋と別れるってことだぞ?」
「わかってる」


敦史が舌打ちをして、髪が崩れるのも構わず頭を掻いた


「なんでだよ……どうせあの女の妄想だっつってんだろ」
「だから調べて証拠が出なかったら、って言ったでしょ」
「だからってなんでお前が犠牲になろうとする?」
「犠牲も何も、本当に妊娠していたら悪いのは僕一人だよ」


敦史から見ればああ言ったらこう言う状態で、もどかしいんだろう
「くそ」とぼやきながら指で机を叩いている

このお店に入った時に頼んで、話し出す前に来ていたコーヒーを飲んだ


熱いうちに飲めばよかったな


緩くなってしまったそれじゃ、意識を覚醒させるには足りない

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