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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


エリカさんはいなくなったものの、敦史が怒鳴って悪い意味で注目を集めてしまったからそこで話し合うわけにもいかず、僕たちはお店を出た

普通なら家に帰るんだろうけど、僕たちが家に戻ったら心配をかけてしまう人がいてそれは出来ない

結局また別のお店に入ることになった


「……」
「……」


席に着いても僕たちはお互いに黙ったまま


エリカさんがいなくても、頭働かないや


暫くすると敦史が重い口を開いた


「…………思い当たる節は、ねぇのか」


財力も権力もあるお父さんの会社とは関係のなかった病院
そこから出された診断書
さらには母子手帳まで

証拠としては完璧で、敦史ももしかしたら本当なのかもと思っているんだろう


敦史ならわかってるとは思うけど


「避妊はちゃんとしてたよ……出来る限り中では出さないようにもしてた」


一応そう伝えた


「そうか」
「……」


短く答えた敦史も、こんなもの何の言い訳にもならないってことくらいわかってる


「……どうせあの女の想像妊娠だろ。ありえねぇよ……な」


最後の「な」が僕に同意を求めるものなのか自分に言い聞かせてるものなのかわからなくて、返事を返せない


「でももし、本当だったとしたら……どうしよう?」

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