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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


「……」


確かにこれはちゃんとした証拠だ


「とりあえず……今日は帰ってもらってもいいですか?」


エリカさんが目の前にいる状態ではまともに頭が働かない

僕が言うと、エリカさんは悲しそうな顔をした


「喜んでくれないの?どうして?私悠史が喜んでくれると思って来たのに!」


「なんで!?」とエリカさんは遂には泣き出してしまった


「チッ、うだうだうっせぇな!!いいから帰れ!!!」
「……っ!」


我慢の限界だった敦史が怒鳴るとお店全体が僕たちの席を探るような気配になる


「敦史……ちょっと抑えて」


僕が宥めると敦史も流石にまずいと思っていたらしく気まずそうに席についた

するとエリカさんが立ち上がる


「…………そんなに言うなら、今日は帰るわ…………悠史、今度会うときはちゃんと喜んでくれるよね?今日は動揺してただけだよね?」
「……」


黙ったまま何も答えない僕に、エリカさんは悲しそうに笑う

その笑顔が本当に悲しんでいるように見えて、妊娠も本当なんじゃないかって焦る


「じゃあ……」


エリカさんが店を後にすると、敦史が「今日は店休むぞ」と携帯でお店に電話をかけてくれた

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