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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


うっとりとした目で僕を見るエリカさんを前に僕の心は荒れていた

コンドームが絶対じゃないことくらい僕も知っている
なのにこんな質問をしてしまったのは、妊娠がありえないことじゃ無くて焦っているから


エリカさんの妄言じゃないかもしれない……
どうしよう

しかも、診断書もあるなんて


「……」


黙り込んでしまった僕には変わって、敦史がエリカさんに詳しく質問をしてくれる


「…………お前のその診断書出したのはどこの医者だ?」
「まだ疑ってるの?駅前の大通りを海の方に行ったところにある産婦人科よ」


頭で地図を思い浮かべると、確かにそこにはちゃんと産婦人科がある


「……」


敦史がエリカさんの言った産婦人科を携帯で調べている

多分エリカさんのお父さんの会社が関係している病院なんじゃないか、と調べているんだろう


暫くすると敦史が苛立ったように携帯を机の上に置いた


違った、か
どうしよう


「……他に何か、妊娠を証明できるものはありますか?」
「悠史まで疑ってるの?傷つくな……」


しゅん、と俯いたエリカさんは鞄の中を漁り始める

そして出したのは「母子手帳」と書かれた小さな冊子だった

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