
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
「ぅ……っ、えぇ……」
胃液まで吐ききって目に浮かんできたものが生理的な涙なのか、別れを想像した悲しみの涙なのかわからない
「はぁっはぁっはぁっ」
そこがトイレだと言うのも構わず床に座り込む
自分が吐き出したものの臭いにやられてもう一度吐き出しそうになったからとりあえず流した
本来なら座るべきところに手をかけて俯く
少し落ち着いたかな
油断するとまた込み上がってきそうな感覚に深く呼吸をすることで対抗した
暫くそうして座り込んでいると、廊下が軋む音
千秋さんを起こしてしまったかな
と焦ったけど、声を掛けてきたのは
「悠史?何してんだ?」
いつの間に帰ってきたのか敦史だった
「敦史……おかえり……」
「……」
辺りに充満する臭いで悟られてそんな呑気なこと言ってる場合じゃねぇだろ、と目で威圧される
「……ごめん」
自分でも何故だかわからないけど込み上がってきた謝罪の言葉を口にすると、敦史が鞄を廊下に置いて僕の横にしゃがんだ
「まだ気持ち悪いか?」
「ん……」
僕の返事に顔を顰めた敦史は僕の背中をその大きな手で摩ってくれる
