
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
でもそれはどっちにしても僕の我儘だ
千秋さんが僕より敦史の方が好きなら
僕は身を引いた方がいいんじゃないか
千秋さんにどちらか選んでくれなんて酷なことさせられない
だったら
いや、でも
そんなことしたら敦史は怒るだろうな
逃げるなってまた言われそう
それになら俺が、とも言いそう
まと纏まらない考えばかりが浮かんできて、絡み合って答えに辿り着けない
けど一貫してあるのは「僕が千秋さんから離れなきゃ」っていう思いだった
僕といるより敦史といた方が嬉しそうだし
それに僕と二人になんかなったりしたら、きっと傷つける
心の内に潜む悪魔が虎視眈々と千秋さんを狙ってる
今だって
何もかも独り占めしたくなったら終わりだ
歯止めが効かなくなって、全部欲しくなって
きっと千秋さんはそれを拒めないだろうし
やっぱりどう考えても僕といたって幸せになんかなれない
「…………」
胃がぐ、とせり上がってくるような感覚に襲われる
吐き気だ
気持ち悪い
「……っ……ぅ」
必死でそれを堪えたけど、我慢しきれなくて僕はベッドから下りた
トイレに入って便器の蓋を開けるとすぐにそこに胃の中の物全て吐き出してしまった
