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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


「すみません。考え事をしていました。すぐに出ますね」


ドアの向こうから千秋さんの返事が聞こえてきて、人の気配がなくなる

僕は急いで頭と身体を洗ってお風呂場を出た

髪を乾かしてリビングに戻ると千秋さんが待っていてくれた


「おかえりなさい」
「ただいま。すみません遅くなってしまって」
「大丈夫です」


僕の方に微笑んでくれた千秋さんが読んでいた本を置いて立ち上がる


「もう寝られますか?」
「悠史さんが寝られるなら」
「では寝ましょうか」


僕が微笑んで言うと千秋さんも微笑んで「はい」と返事をしてくれたので、僕たちは部屋に向かった


「電気消しますよ」と一声かけて部屋の電気を消してベッドに入ると千秋さんがもそもそと近くに寄ってきてくれる


「おやすみなさい、千秋さん」
「おやすみなさい」


千秋さんの身体から力が抜けて、だんだん呼吸が深くなる

寝息が聞こえてきたのを確認すると僕は静かに息を吐いた
そしてお風呂場で一人考えていたことを蘇らせる



千秋さんから離れたいのか
千秋さんから離したいのか

どっちなんだろう?


敦史には当然幸せになってもらいたい
けど、千秋さんの側から離れたくない

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