
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
心が狭くなったのか、千秋さんのことを好きになりすぎたのか、また別の理由なのか
自分のことなのにわからないことが多すぎる
それで今日は何でか朝から敦史は機嫌が悪くて、千秋さんは敦史のことばっかり気にしてた
それで、転んで、怪我をして
でもそれより何より最低なのは千秋さんが痛がっているのに、その血に目がいって、千秋さんに消えない傷を付けられたらいいなんて考えていた自分
敦史が部屋に行ってしまって千秋さんが焦っている中違う意味で焦っていた僕は特にフォローも出来なかった
最低すぎる
「……」
三人で、なんてやっぱり無理なのかな
頭の中に浮かんだ考えが言葉として形になると急に現実味を帯びる
これからずっと三人一緒に生きていくなんて、簡単じゃない
と言うか、多分無理
世間体も気にしなきゃいけないし
他にも……
自分で言い訳をするように数々理由を挙げる僕は、千秋さんと離れたいんだろうか
それとも、敦史を千秋さんから離したいんだろうか
またわからない
答えの出ない考えを続けていると遠慮がちにドアがノックされた
「悠史さん?」
「はい?なんでしょう?」
「あ、良かった……なかなか出て来られないので寝てしまったかと思いました」
心配かけさせちゃったな
あがらなきゃ
