
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
僕が微笑みかけると千秋さんも微笑んでくれた
「千秋さんが笑顔なら、僕達も笑顔でいられます」
「……ありがとう……ございます」
目を少し潤ませてお礼を言った千秋さんを見ながら
僕の心はざわついていた
僕と一緒にいる時は僕のことだけ見ていてほしいのに
どうして敦史のことばっかり気にするの
「ご馳走様でした。……僕お風呂入ってきますね」
「はい」
僕はとにかく落ち着こう、とお風呂場に向かった
寝巻きを適当に用意して脱衣所に入り、服を脱ぐ
お風呂場に入ったら一度身体を軽く流してから湯船に浸かった
「はぁ……」
嫌だな
こんな風にため息ばっかりついて
千秋さんの前じゃ絶対出来ないよ
揺れる水面に映った自分の顔をかき消すように手でお湯を軽く掬う
そのお湯を顔を洗うようにかけた
「……」
ほらまた
ため息つきそうになった
思い返すのは今日一日、と言うより昨日の夜から今までの一日とちょっとのこと
昨日の夜帰ってきたら千秋さんと敦史が一緒にソファで寝てたんだよね
あの時……
鮮明に覚えている記憶を引っ張り出せば心臓が焼けるように熱くなる
認めざるをえない
僕は敦史に嫉妬してた
