
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
控え室で敦史が僕の方を気にしてるのは気づいてたんだけど、もしかしたら僕の態度に怒ってるのかもとか思うと話しかけにくくて
視線を無視してお店を出てしまった
「はぁ……」
だめだな、僕
「ただいま」
家に帰ると、千秋さんがひょこっと顔を出した
「おかえりなさい」
うん
家から出る時より表情明るくなったかな
「ただいま」ともう一度微笑みかけてリビングに入ると、いつもある夕食がない
ちゃんと言ったことを守って安静にしていてくれたんだろう
「お腹すきましたよね。今ご飯作りますから」
「ありがとうございます」
申し訳なさそうに微笑む千秋さんの髪を掻き上げて額にキスを落とす
「たまには千秋さんも楽してください」
「そんな……大変なんかじゃないですし……」
しゅん、とまた俯きそうになった千秋さんに僕は「それにね」と続ける
「たまには僕の手料理も食べて欲しいので」
「!」
僕の言葉に千秋さんは
「悠史さんのご飯、楽しみにしてますね」
と笑ってくれた
よし、頑張ろう
キッチンに立つのすら久しぶりな気がするけど
「ちょっと待っていてくださいね」と千秋さんをリビングに残して僕はキッチンに向かった
