
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
仕事が始まっても俺の心の内は晴れないままだ
「でね〜その時そいつがなんて言ったと思う!?」
「……」
「顔が悪いんだから身だしなみくらいちゃんとしたら?って言ったのよ?酷いよね!?顔わるくないもん!!」
「そりゃ酷いな」
「だよね!?」
「……」
たまにしか返事も返さず、返した返事も大したことのない内容
他のホストがやったらバッシングを受けかねない行為だが、俺の普段の態度が幸いして特に何も言われない
「本当、疲れるわー仕事……」
俺の肩に頭を預けた客の女がキツイ整髪剤の匂いを俺のスーツに擦り付ける
やめろよ
くそ
離れろっていう意味も込めて俺が頭にキスをしてやると女は俺の思惑通り俺から離れて顔をうっとりと眺めてきた
帰りてえ
いや帰っても気まずい思いするだけか
「流星、今日アフター行こ?いいでしょ?ストレス発散に付き合って?」
今日は悠史が家に帰る日だしな
こいつでもいいか
香水やらワックスやらで臭えけど
先に風呂入らせりゃいいや
「あぁ。いいぜ」
「やったぁ!楽しみにしてる」
「あぁ」
女の面倒くさいテンションにため息をついていると黒服が俺の席交代を告げて、俺は席を立った
