
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
準備を終えて玄関に向かうと、千秋が見送りに来てくれた
「では、行ってきますね」
「いってらっしゃい」
鞄を持って歩み寄ってきた千秋の表情はさっきよりよっぽど晴れやかになっていて、俺の心中はまた荒れそうになる
「敦史さんもいってらっしゃい」
千秋は俺にも微笑んでくれたが、俺は「あぁ」としか言えなかった
出勤途中、案の定悠史が話しかけてきた
「敦史、何にそんな苛立ってるの?」
「いや……悪い……」
自分が悪いなんてことはとっくにわかってるから、俺には謝ることしか出来ない
が、千秋が怪我をした以上そんな謝罪の言葉で納得出来ないんだろう
悠史は俺を問い詰めるように続けた
「……千秋さんが怪我したんだよ?本人に謝りもしないで許されるわけないってわかってるよね?」
「……」
んなことはわかってんだよ
収まっていた苛立ちが蘇ってきて
俺の性格上言われっぱなしなのにも腹立ってきて
「別に千秋が転んだのは俺のせいじゃねぇだろ」
思ってもないことを言い返してしまった
当然悠史は俺の言い方に反応する
「何その言い方……」
「うるせぇな」
本当、俺って性格悪いよな
