言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
情けね
「千秋さん、千秋さんが悲しそうな顔をしているのが僕達は一番悲しいです」
「悠史さん……そう、ですよね!雰囲気悪くしちゃいけませんよね!」
無理やり笑顔を作った千秋の頭を悠史が優しい手つきで撫でた
「……」
俺は居たたまれなくなってその場を離れて部屋に向かう
今日着るシャツやらジャケットやらを選びながらさっきの光景を頭に思い浮かべる
悠史ばかりが千秋を慰めて、俺には何もできない
恋人、なんだもんな
そりゃ優しい方がいいよな
俺は……人を傷つけてばっかりだし、な……
って……あーーくそ
こんな女々しいかったか?俺
自分の思考回路が気持ち悪くて、無心になるために携帯を開く
意味わかんねぇほど来てるメールにざっくり目を通して返信していく
それを暫く続けていると部屋のドアがノックされた
「敦史?支度終わった?もう出れる?」
「あー……あと髪やったら出れる」
「わかった。ちょっと早めに出るから急いでね」
「あぁ」
なんつーか
部屋から出るのさえ若干勇気が必要になっていて
ドアの前で一度深く呼吸をして気持ちを落ち着かせてから俺はドアを開けて洗面所に向かった
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