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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


懸命に慰めてくれる悠史を濡れた瞳で千秋が見上げる

そしてその目が今度は俺を捉えた


怒ってないか、と問うような瞳に俺はぎこちない笑みを浮かべる


「失敗ぐらい誰にでもあるだろ。気にすんな」


くそだせぇ
嫉妬して焦らせて千秋に怪我させるとか
最低だ


俺は言った後すぐに目を逸らしてしまって、その後の千秋の表情はわからない


「今……ここ片付けて新しいご飯用意しますね……」


そう言って立ち上がろうとした千秋を悠史が止める


「そんな怪我で、掃除や料理なんてさせられると思っているんですか?怪我が治るまで暫くは安静にしていて下さい」
「でも……!」
「僕がやりますから。ね?」


悠史が首を傾げながら半ば強制するように言うと、流石に折れた千秋が再び謝罪の言葉を口にした


「じゃあ敦史、ここの片付けよろしくね」
「あぁ」


俺に一瞬だけ向き直った悠史の顔は笑顔だったが


ーー馬鹿


俺を叱っていた


「さ、千秋さん手を貸してください。歩くのは危ないのでソファまで僕が抱き上げていきますから」


悠史が千秋を移動させている間に、俺は洗面所に向かって雑巾を取りに行った

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