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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


救急箱を持って千秋の側に行くと、悠史が千秋の手首を握っていた

そんな止血をしなきゃいけないほどやばいのか、と一瞬血の気が引いたが、傷を見れば大したことないことがわかってほっと息を吐く


「千秋、手出せ」
「は、い……」


とは言っても傷はいくつかついてしまっていて、あらゆるところから溢れた血が手全体をじっとり濡らしていた


「……っ」


タオルで血を拭いて消毒液を吹きかけると千秋が息を詰める

両手がふさがっていて何もできない俺の代わりに悠史が千秋の頭を撫でた


「大丈夫ですよ、千秋さん」


ガーゼを当てて包帯を軽く巻く


「ありがとうございます。……ご迷惑おかけしてごめんなさい……」


俯いた千秋の頭を悠史が撫でるが、俺は千秋に触れることが出来ない


「そんな顔しないで下さい。大丈夫です。怪我が大した事なくてよかった」


そう言って悠史は微笑む


「でも……ご飯も……だめになっちゃっ……っ」


割れた茶碗や皿に、床に撒かれた米や味噌汁

確かに床の上はなかなか悲惨なことになっていて、それを見た千秋が目を潤ませた


「ごめ、なさ……い……っ」
「千秋さん泣かないで」

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