
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
「お二人ともお待たせしました。ご飯できましたよ」
「あぁ」
「ありがとうございます」
千秋さんに声を掛けられて立ち上がる
本当は準備くらい手伝おうと思ってたのに、全部やらせちゃったな
「「いただきます」」
「はい、どうぞ」
美味しい
千秋さんの料理、段々美味しくなっていってるような気がする
千秋さんが僕たちの味覚に合わせてくれているのか
僕たちの味覚が千秋さんの料理に合うようになったのか
どちらにしても胃袋を握られていることにはかわりないな
「千秋さん、これとても美味しいです」
パッと顔を上げると、千秋さんが僕の方を向く
「本当ですか?嬉しいです。ありがとうございます」
そう言って笑ってくれたけど
「僕の方を向く」ってことはそれまでは別の方を向いていたわけで、それは多分
敦史を見てたのかなぁ
僕達が食事しているのを見ている千秋さんが、昨日僕一人で食事している時よりずっと嬉しそうに見える
敦史がいるから?
うぅん……
「ご馳走様でした」
「ごちそうさん」
ほとんど同時に食事を終えると、空っぽになったお皿を見た千秋さんが嬉しそうに「お粗末様でした」と笑った
