
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
「敦史さん!おはようございます、おかえりなさいっ」
「はよ。朝飯は?」
「すぐ出来ます!」
あれ、なんか
千秋さんの笑顔が僕と接する時より輝いてない?
もやっと心の中に生まれてきた黒っぽい綿毛
料理をしている姿も、敦史が起きて来る前よりちょっと嬉しそう
いや、そう見えるだけだろう
自分だけに笑顔が向けられるわけではないこの関係で、自分より敦史の方がいいんじゃないかなんて不毛なこと考えてはだめだ
それに昨日僕だって千秋さんに嫉妬されたりーーー
って、あぁ……
この考えがダメなんだって
些細なことでこんなに思い悩むようじゃだめだな
僕は平常心を心掛けながら再び新聞に目を通した
「今日は何か面白いことあったのか?」
僕の新聞を覗き込みながら敦史が聞いてくる
「んー……とね」
昨日まで経過を報告してた政治系の時事問題と芸能ゴシップなんかを敦史にまとめて伝える
「へぇ、わかった。ふぁ……ぁ」
ぼーっとしててもそこそこわかってるからすごいよね
今は大欠伸してるけど
「よだれ垂らさないでよ」
「垂らしたことあったか?」
「未来は誰にもわからないよ」
「アホか」
