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言葉で聞かせて

第12章 忘れられないこと


考えてみれば、おかしいことだらけだった

例え俺個人が喧嘩をやめたとしたって道を歩けば俺に恨みがあるようなやつなんて五万といるわけで

だから

ここ最近誰も喧嘩を売ってこなくなったのって



悠史ーーーー?



心臓が早鐘を打つ

色んなことが頭の中でぐるぐる繋がった

世界の誰もなれない「身代わり」を悠史だけはなれた
だから悠史は自分を身代わりに殴らせた

それに、俺が殴ったところを上から殴られたって誰も気がつくわけねぇ

そしたら相手の鬱憤も晴れて
自分が身代わりになっていることを俺に悟られることもない



馬鹿野郎


それじゃ
お前が傷つくだけだろうが


それじゃ

誰がお前を守るんだよ



俺が最も憎んでいた同じ顔を同じだけ憎む権利のあった悠史は、それを利用して俺を守っていた

その事実が胸に刺さって


死にそうだ



俺は悠史の前に飛び出した


『ーーっ』
『っと……おぉ?弟君の登場じゃねぇか!』
『あ、つし……、っんで、きたの……』


悠史は息も絶え絶えで、それでも俺をいつもの優しい目で見つめてくる


『ごめん。悠史……』
『……』
『おいおい、美しい兄弟愛はその辺にしろよ』


俺は自分より年上の男数人に向き直った

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