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言葉で聞かせて

第12章 忘れられないこと


殺す


俺が向かっていこうとすると、悠史が俺の腕を取った


『待って……!!!』
『チッ、なんだよ!!!なんで止めんだよ!!』


振り返った先の悠史は目に涙を溜めていて、久しぶりにちゃんと交わったその目が俺に訴えかけてくる


ーーやめて。これ以上傷つかないで!!!


傷「つかない」で?
俺が人を殴ろうとしているのに?

どうして
人を殴った俺の方が傷ついてるって言うんだ



喧嘩慣れした奴らは俺が迷った一瞬の隙を見逃さない


『オラァッ……!!!』
『ーーっぐ……ぁ!!』
『敦史!?』


俺がよろけた隙に数人いたうちのもう一人が俺の腹を殴った


『ぅぐ、ぁ……!!』
『なんだこいつ?ちょー弱えじゃん!』
『ははっ本当だぜ!』


転がった俺に容赦なく蹴りの嵐が降り注ぐ


頭も背中も腹も脚も
身体中蹴りまくられて意識が遠くなっていく


『敦史!!敦史!!!』


悠史の声が遠くに感じる


悠史もこんなに痛かったかな
いや、こんなもんじゃなかっただろう


なんて馬鹿だったんだろうな、俺
悠史にもっとちゃんと謝らなきゃ



視界の半分以上を地面が占めて、残りの半分を人の足のが占める

気がつけば俺の意識は真っ白な靄の中に埋もれていた

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