
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
ひでぇ話だよな
俺は悠史が断れないとわかってて言ったんだぜ?
自分を鏡に写したような正反対の人間
優しくて
どんなことされても笑顔で
みんなに好かれていて
そんな悠史のことを俺だけが
世界で一番嫌いだった
『……わかった……その代わり、もう他人に暴力を奮ったりしないで』
『……あぁ……』
あぁ、愉快だ
『……っおら!立てよ……っ……あぁ……っ!!」
退院して俺は悠史と約束を交わした通り気が向いた時に好きなだけ悠史を殴って遊んだ
親や姉にバレないよう腹や脚を殴るあたり、俺の最低さもなかなかのものだな、なんて呑気に考えていたっけ
『ぅ、うぅ……』
部屋の床に転がって呻くだけになった悠史に興醒めだ、とベッドに寝転ぶ
暫く床でそうして転がっていた悠史はか細い声で
『今日は……もう、いいの……?』
と聞いてきた
抵抗されねぇってのもつまらねぇな
かと言ってこいつに殴られるなんて死んでもごめんだし
露骨な舌打ちをすると、悠史が身体を震わせた
これ以上殴ったらお前動けなくなんだろうが
そしたら親にバレてやめさせられる
そんなつまんねぇことさせるかよ
