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言葉で聞かせて

第12章 忘れられないこと


だよな
俺、最低だよな

だけど俺が本当に最低なのはこっからなんだ



親が来なくても自分だけは毎日見舞いにやってきた悠史は、おれが身体を起こせるようになった頃真剣な瞳を俺に向けた


『敦史、お願い。もう喧嘩はしないで。父さんも母さんも悲しんでるよ。僕も悲しい』
『っせぇな!!じっとしてんのストレス溜まんだよ!!!退院したらまた喧嘩しに行くに決まってんだろ!!!』
『敦史……』


悲しそうな目
俺がこいつを悲しませてる


その時の俺は目の敵にしてきた奴が苦しんでいることが可笑しくてしょうがなかったんだ

だからその後したことも、最初はただ悠史を困らせてやりたかっただけ、だったと思う


俺は悠史の胸ぐらを掴んで顔を近づけた


『……っ』
『そんなに俺が他人に喧嘩を売るのが嫌ならお前が捌け口になればいい』
『……え……?』


俺の顔はこれ以上ないほど醜く笑みの形に歪んでいただろう


『お前が、俺の全ての欲を受け入れればいいんだよ。そしたら俺が喧嘩しなくて済むだろうが』


悠史が生唾を飲み込んだ


『……僕に、サンドバッグになれって言うの……?』
『別に嫌ならいいぜ?』

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