
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
「ちゃんと、聞きたいです」
やっぱりな
俺は肺の中に溜まっていた空気を吐き出した
千秋ならそうすると思ってた
千秋は強い
いや、正確には強くなった
自惚れかもしれないが、俺たちと居てより強くなった
自分の辛い過去も全て乗り越えて
流されるままだった自分を変えた
だからどんなに辛いことでもちゃんと乗り越えようとするだろうと思っていた
「そうですか」
悠史が微笑んでいる
悠史もわかってたってよ
そらそうか
俺に分かることは悠史にもわかるよな
俺の口元も自然と綻ぶ
「……何から話そうか……あぁ、一緒に住んでる理由を聞きたかったのか。それなら発端はーー」
俺は千秋に高校の時の彼女のことを話し始めた
当時俺のことを悠史の次に理解し、俺のことを悠史と比べもせずに好きになってくれた女のこと
俺の失態で汚されて
俺を怖がって
そして離れていった
「ーーっ」
口元から笑みが消える
しかしドン底に沈み込んで行った気持ちは悠史が背中をさすって引き上げてくれた
昔の女のことを話し終えると、千秋は眉を潜めて何かを耐えるような顔をした
「……」
何考えてんだろ
わかんね
